~元出版流通業者の「本と周辺の話」② 「再販制と委託販売制」

2014-12-24

 出版業界の基本について語りたいと思います。

 出版業界の他業種との違いで最大の特徴なのが、「再販制」と「委託販売制」。

 書籍・雑誌などの商業出版物は文化産業という建前のもと、出版社や書店を保護する意味で再販制と委託販売が成立しています。


    【再販制(再販価格維持法)とは?】

 メーカー的立場の出版社(版元)が、在庫リスクのある出版社が値付けを行うことになっており、小売業者(書店)は価格設定ができないことになっています。

 スーパーやコンビニ、百貨店などの小売業は値付けが可能で、ポイント制度・景品などでさまざまな価格戦略を打ち出せますが、書店は基本的にそれができません。しかしながら近年楽天ブックスのポイント割、紀伊国屋、HONTO(丸善&ジュンク堂系)などのポイントカードがあり、有名無実化しています。


   【委託販売制とは?】

 出版社(版元)が卸売業者(取次業者)に仕入れ交渉し、部数を決定します。これは版元のほとんどが首都圏に集中するため、ほぼ東京で行われます。取次業者は全国の取引先書店に割振り(新刊配本)し、送品します。

 要は取次業者が一方的に、勝手に処理するということです。その見返りに書店は本を返品することができます。これが委託販売制度です。

 取次は送品分の金額を書店に請求しますが、返品可能なため、代金の請求は送品分と返品分を後日相殺する形となります。

 この返品システムのコスト削減が長年の取次の問題、そして出版業界全体の課題とされてきました。
 とはいっても返品できない例外もあります。「買切」といって岩波書店や理工系・医歯薬系の版元などがそうです。

 この委託販売制のため返品も可能だし、読者からの注文もキャンセルされると返品できるので、正直ゆるい配送体制となっています。このあたりが他業種に比べ、ぬるま湯体質を産んできたと指摘されます。しかし文化産業はゆとりのないところではあまり発展しないものともいわれます。

 この委託販売と返品制度がずっと賛否両論を呼んでいましたが、業界にとってこれを崩すのは「パンドラの箱」と言われて久しい状況といえます。


 【そんな中での書店経営の戦略はいったい?】

 書店の経営の差別化は長年「立地・ロケーション」、「品揃え」、「内装・外装・レイアウトなど店舗の雰囲気」、「郊外型店舗なら駐車代台数など」のみに大きく左右されると言われてきました。もちろんいろんな仕掛けや接客力なども大事でありましたが、さほど重視されていなかったかもしれません。

 出版不況の波が平成大不況の同時期の1997年に押し寄せてきます。町の書店の閉店ラッシュの始まりです。
 その中で、POPや文脈のある棚作り、外商に力を入れ工夫を施した書店が登場しますが、抗えない状況がすでに18年も続いています。


基本的なマージン(正 味)        出版社 (70%)   700円
                      取 次 (8%)    80円
                      書 店 (22%)   220円
小 売 価 格                         1000円(税別)


 ご覧のように書店も薄利、取次業者も思い切り薄利といえます。版元が利益を吸い上げるように見えますが、返品という在庫リスクを背負っているため、こういう構造になっています。

 町の書店さんはドンドン閉店に追い込まれ、ブックオフなどの新古書店、メガ書店の台頭、図書館の利用の拡大、さらにはネット書店の登場によって追い討ちをかけられてきました。

 90年代初頭のバブル崩壊の頃、日本の出版業界全体は「不況に強い安定業種」と呼ばれて、1996年の2兆6500億円市場になるまで伸び続けます。

 町の書店は先述のように薄利多売な上にゲーム機・携帯電話・インターネットなどのライフスタイルの変化や生産年齢人口の変化に対応できず、衰退の一途をたどることになります。

 本はいわゆる嗜好品であり、生活必需品ではないので、このような事態をさけることはできません。結局長年の安定業種ということにあぐらをかいていたのでしょう。

 また再販制と委託販売制が出版業界全体に硬直化をもたらしたものと考えられます。90年前半に制度疲労の予兆があったのかもしれません。

 出版業界全体もいつまでも「出版不況、原因は一体?」と叫ばず、このあたりをはっきり認識すべきです。柔軟な変化を考えないといけません。いや、すでに考えてますよね!


   

コメント2件

  • yoshio | 2015.06.03 16:24

    1996年の2億6500万円市場になるまで伸び続けます。→ 2兆6,564億円ではないでしょうか?

  • willetoyoda0058 | 2015.08.30 7:53

    お読みいただき、ありがとうございました。

    訂正いたしました。つつしんでお詫び申し上げます。

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