~元出版流通業者の「本と周辺の話」⑥「業界第4位・栗田出版販売の経営破たん」

2015-07-17
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【新文化2015.7/2号の記事より~その1】

中堅取次会社の栗田出版販売(東京・千代田区、資本金3億7800万円、山本高秀代表)は6月26日、東京地裁に対して民事再生手続き開始の申し立てを行い、同日、同地裁が財産(債権)保全命令を出した。すでに日販などが出資する出版共同流通がスポンサー企業候補として挙がっており、今後、大阪屋との統合を目指す考えを発表している。


栗田出版販売(以下「栗田」で省略)は1990年代初頭は700億円の売上(1991年9月期の発表)を記録した。しかし、2013~2014年度売上高は329億円で10年連続の減収。経常利益は6年連続で損失となり、約30億円の債務超過に陥っていた。2012年11月には東京・板橋区にある旧本社を売却し、神保町に移転。西日本地区の支店も大阪支店に統合、さらには早期退職者募集、ネット販売のブックサービスも楽天へ譲渡などのリストラ策を進めていた。
(中 略)

今回、物流面で支援する大阪屋は2008年8月、栗田と業務提携し、協力関係にある。2009年に11月に2社の合弁会社、㈱OKCを設立し、埼玉・戸田市に共同で「OKC戸田物流センター」を立ち上げた。今後、栗田は大阪屋に信用補完と物流代行の支援を受け、出版共同流通ほか、大阪屋の関西ブックシティ(KBC)と連携して物流を行う。
出版社との部数交渉窓口は、従来通りの条件(正味、つまりマージンなど)で栗田が行う。「新刊・注文分」の取引主体は大阪屋で、同社が出版社から書籍・雑誌などを仕入れる。出版社は「栗田分」として従来通りにOKCに搬入。出版社が出す仕入れ代金の請求先は大阪屋に変更され、大阪屋から出版社に支払われる。
書店からの注文対応は、従来通りに方法(VANや書店からの直接注文)で栗田が受け、栗田に在庫がある商品に関してはそのまま出庫。在庫がない場合は栗田が出版社に発注して取り寄せる。緊急の場合は大阪屋のKBCの在庫を活用してバックアップ体制で臨む。

返品主体も大阪屋となる。書店からの返品はこれまで通り、栗田のラベルが貼られて出版共同流通から出版社に商品が戻る。ただし、法的に6月25日以前の仕入れに伴う債務との相殺処理はできない。26日分搬入分以降の請求分と相殺となる。6月25日までに栗田で発生した債務は、東京地裁が発令した財産保全命令により、一部の例外を除き、債権者に対して再生計画外で任意に弁済することはできない。出版社への弁済額は今後策定される再生計画に盛り込まれると見られるが、「なるべく高い率で弁済できるようにしたい」(栗田関係者)と話している。栗田では出版社に向けた文書で「6月26日以降の取引により発生した債務については、確実にお支払いさせていただきます」と記し、今後の新刊、既刊書などの出庫に理解を求めている。

書店はこれまで通りの取引で一切の変更はない。



                                                                                                        
‥‥まあ、業界3位の大阪屋が経営危機なのに、4位の栗田が好調というのは考えられない話です。 確か1991年といえばヤマト運輸と提携し、《本の宅急便》である「ブックサービス」を立ち上げて間もない頃だ。他業種に比べ遅さが慢性的な書店の取り寄せ注文に対応したサービスで、電話かファックスで本の注文を受けて数日後にはお客様に商品が届くという、当時としては画期的なサービスだった。

「なぜ、本の注文は商品到着が遅いのか?」‥‥それは、出版物は基本的に委託販売のためお客様からの注文(「客注品」といいます)を受けてもキャンセルする可能性があり、出版社としては返品されるというリスクがある。よって他の本などの注文が段ボール箱(「パッキンケース」といいます)が満杯になるまで出荷を保留する。そこから取次に出荷されてもここの物流センターでも書店行きの商品が一個のパッキンケースになり次第、出荷を始めるという流れなのです。そのため客注品は1週間~2週間の到着を要するという非効率的なシステムから逃れられなかったのです。
今ではAmazonがネット上で受注、直ぐに出荷~お客様への到着が翌日~3日以内という大幅なリードタイム減少を実現しています。
                                                   

【新文化2015.7/2号の記事より~その2】

首都圏栗田会の奥村会長(南天堂書房)は6月26日、早くも「栗田支援」を表明。大阪屋の株主である大日本印刷、楽天、講談社、小学館、集英社、KADOKAWAの6社も支援する方針を固めているようだ。大阪屋の株主の1社である講談社の森武文専務は6月26日、「今は困惑している。しかし、栗田が事業を譲渡し、書店を守ることができるならば、今回の措置もやむを得ない。今後もできる限り応援したいと思う」と話し、小学館、集英社も栗田を支援する考えを示している。


倒産・自主廃業した取次会社は鈴木書店をはじめ少なくないが、最大規模になるのはほぼ確実。帝国データバンクでは栗田の負債額を約134億円と報じているが、数十億円程度という見方もある。
物流業務で支援する日販グループの出版共同流通が、スポンサー企業として候補に挙がっているなか、大阪屋との競合は早ければ来春にも現実化する可能性がある。



‥‥2008年の段階ですでに大阪屋と提携していたが、このあたりの話は予想通りです。私が大阪屋にいたころから「大阪屋は栗田を統合するんだろうなあ」という噂は出回っていました。
栗田は1918年(大正7年)に「栗田書店」として創業した後、戦時統制によって「日本出版配給(日配)」に組み込まれた。そして戦後再び独立し、現在の組織となった。札幌、福岡に支店を展開して売り上げを拡大。いわば戦前からの取次の「独立の雄」なのです。
長年続く出版不況の中、栗田が生き残ったのは「街の本屋さん」を大切にし、トーハン、日販の目が行き届かない小回りを利かせた取り組みを進めていた点にありました。
すでに経営危機の大阪屋が栗田と統合し、楽天の傘下に入るという筋書きになる。硬直した出版業界、特にトーハン、日販の二大大手が独占している出版取次業に第3勢力として新風を巻き起こしてほしいところです。
                                                                                                                                                                                                                                                   

コメント2件

  • 清水 理 | 2015.07.20 14:29

    ~元取次視点の出版流通の話② 「再販制と委託販売制」2014-12-24
    1996年の2億6500万円市場になるまで伸び続けます。
    これは2兆6500億円の間違いではないでしょうか。

  • willetoyoda0058 | 2015.08.30 7:49

    お読みいただき、誠にありがとうございます。

    申し訳ありません。訂正いたしました。お詫び申し上げます。

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