2011年3月の記事より 書店人&出版人のエッセイ‥‥。

2014-12-16

~2011年2月の毎日新聞の記事より~

【ジュンク堂書店難波店店長のエッセイ】

 世界最大のネット書店Amazon(アマゾン)が「日本上陸」して10年を超え、昨年「上陸」したキンドルやiPadは、これまでの電子書籍とは違い、すぐに読めるコンテンツを十分に用意して登場した。今や読者は、家にいながら書物を宅配してもらい、コンテンツを即座に電子書籍に送信してもらうことができる。自宅のパソコンは、インターネットの情報の海に直結している。

 それでも人は書店にやってくる。何を求めて?

 それは偶然というものの魅力、出会いというものの不思議さだと思う。1冊の書物と読者の出会いの頼りなさに、その出会いの場となるこれまた頼りなげな書店空間に、人はむしろ解放性と可能性を見出す。
逆に、一見開放的なネット空間は、ある意味の閉鎖性を持つ事を避け得ない。書店の「頼りなさへの開放性=可能性」に対して、「頼りがいゆえの閉鎖性=必然性」と呼ぶべきか?

‥(中略)‥

 書店、出版という営為の存在意義を担保するのは、「まったく新しい本」、ネットの大海に沈められ、既存の価値観に無意識に伴われてピックアップされる情報ではなく、自らが存在とエネルギーを主張しながら生まれてくる書物なのだ。
旧態依然に満足して新しいものを生み出す力と勇気を失ったときに、出版社と書店は滅び行くのである。

‥‥ジュンク堂書店はもともと神戸・三宮の大型書店が中心であったが、90年代後半より全国に躍進。その当時バブル崩壊の後遺症による都心の地価下落により店舗の賃料落ちる。この状況により果敢にメガ店舗を拡大。いまや全国各地に店舗を持つ大手書店としてブランド化した。


【宝島社社長のインタビュー】

『出版科学研究所によると、雑誌や本の推定販売額は1996年の2兆6564億円をピークに2009年は2兆円の大台を割り込んだ。返品率も書籍で2009年に40.6%まで上昇した。一方、宝島社が10代女性の月刊誌を創刊したのが1989年。その読者の成長に合わせ、20代向け、30代向け、40代向けとラインアップを拡げてきた。20代向け「sweet」は昨年3回、実売で100万部を突破した』

‥(中略)‥急速に売上を伸ばすのにもっとも強力な武器は何か、と考えた結果が雑誌だ。「一番誌戦略」を掲げて、各世代向けの雑誌でそれぞれトップを目指した。1位になれば雑誌の売上はもちろん、広告収入も増大する。この目標の達成が増益増収に繋がった。今年は売上、純利益で業界トップを目指す最初の年と考えている。

‥(中略)‥どの出版社も考えたことがないマーケティング手法を導入した。日本の出版社は平気で「編集優位」などといって、営業や宣伝は編集の付録という考えでやっているところが多い。宝島社は編集以外の組織の長も「マーケティング会議」という同じ土俵に乗って実現のために汗をかく。そういう組織構造を作り上げた。
「価格」「流通」「プロモーション」「商品」、この4つの要素を徹底的に検討した。女性誌の価格の毎号変化させ、毎回特集も表紙のモデルも付録も変え、その号の中身をみて、いくらかなら読者に受け入れられるか考えた。
女性誌の付録も雑誌の編集者が直接開発に当たっている。大手の出版社もすぐに追いつけるとは思っていない。

‥(中略)‥出版界は「出版不況」という言葉に縛られすぎていると思う。経営者に伸ばそうという意志がない限り、売上増大は不可能だろう。

 電子書籍は読者に受け入れられないのでは?端末もコンテンツも売れたという話しを聞かない。

‥(中略)‥日本の出版社は米国の成功を見て「黒船襲来」と慌てて、計画のないまま電子書籍の団体を作ったところもあった。重要なのは、日本独自のビジネスモデルをどうするか。各社が徹底的に考えて開発しないと新しい事業が興るわけがない。

今語られている電子書籍には参入しないと思う。取次や書店といった出版流通を応援し、活性化しながら業界全体の盛り上がりを図っていきたい。もし電子書籍の普及が進めば書籍や雑誌のつぶしあいになり、逆に危機が深まる結果になりかねない。

 雑誌や本が売れないのは取次会社が返品を抑制するために配本部数を減らしたことも要因のひとつだ。一種のデフレ政策だから、ある程度改善すれば拡大策に転じるべきだと思うが、まだその方針は見られない。それより重要なのは出版各社の経営危機だろう。2、3年続けて赤字を出しているところも多い。電子書籍にうつつを抜かしていないで経営改善を急げといいたい。宝島社は、お客さまがワクワクするような棚つくりを書店に提案している。本を売るための必死の努力を傾けるべきだ。市場が縮小している今こそ経営改善のチャンスでもある。

‥‥サブカルチャー雑誌「宝島」でコアな読者層を掴み、そして私自身も20代のころにハマった「別冊宝島」。実は同人誌時代のWilleのコンセプトもこの「別冊宝島」や雑誌「宝島30」などをお手本にしたところがあった。「別冊宝島」においてはテーマは「ディープでコア」なものであり、表紙や全体の雰囲気、デザインはポップ。そして紙面はカラフルなものであった。

 人文書のような雰囲気では専門に研究しない人以外から敬遠されるが、「宝島」のような雰囲気では当時若い層でも大いに受けた(私もその一人である)。「マニアなモノをポップに扱う」ことによって僕自身に、大いに情報収集、知識の咀嚼を促進させてくれたのである!

この感じだと宝島社はまだまだ躍進が続くことでしょう!



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