6月, 2015年

 ~元出版流通業者の「本と周辺の話」⑤ 「スタイリッシュなセレクト古書店」

2015-06-03


 最近、雑居ビルの一角や市街地の外れにスタイリッシュないわゆる「セレクト古書店」が静かなブームになりつつある。本好きな人を中心に話題をさらっている。
                                                             
 こうした動きの背景には「町の新刊書店」、いわゆる地場書店の慢性的な廃業ラッシュが大きく起因している。

 メガ書店やアマゾン、楽天ブックスなどの寡占的状況の現代、「個人で書店を開業したい!」という夢はほぼ不可能といっても過言ではない。例えば街角で30坪程度の新刊書店を開業しようと思っても初期投下資金は数1000万円かかるのだ。
 売れない新刊書籍を販売したところで所詮ハイリスク・ローリターン。これでは書店開業は夢のまた夢だ。
‥‥という背景のもと在庫リスクのかからない古書、そして従来の町の古本屋ともブックオフなどの新古書店とも違った「セレクト古書店」開業の動きが活発化してきているのだ。

 私は最近、営業巡回でいろんなセレクト古書店を見てきた。絵本専門や映画専門、サブカルチャー系、アート系、果てはリトルプレス(いわゆる自費出版の一種)などを前面に打ち出した古書店などがあり、観てまわるだけでとてもワクワクした気分になる。

 カフェ、雑貨、ギャラリーとの業種を兼ねた複合型の店舗が多く見られる。

 こういった古書店はイベント戦略も積極的だ。店舗でイベントを定期的に行い、その情報をネット上、特にSNSで拡散してもらうのだ。

‥‥しかしながら従来の町の新刊書店も負けてられない動きがある。最近ではイベントを積極的に行う書店も多い。
というのは、新刊書店が相次いで閉店しはじめた1997年以降の出版不況が背景にあり、地場書店の生き残りをかけた策のひとつがイベント戦略なのだ。

 書店業界は「再販制」「委託販売」のもと、経営に大きな工夫をしてこなかった、いや規制だらけで工夫ができなかったと見るのが正しいだろう。

 取次側も売れる書店の条件は「立地」「売場面積」「品揃え」しか頭になく、業界のイノベーションを怠ってきたツケが今の出版流通事情だ。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      
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